弦を弾いてから、少し遅れてヘッドホンが鳴る。歪ませた音の後ろに、もう一つ生っぽい音が重なる。ギター録音でこうなると、いつものフレーズも弾きにくくなります。
最初に見るのは、パソコンの性能より「ギターの音を、どの経路で聴いているか」です。二重音は聴く経路の重なり、遅れはソフトの処理や設定を順に調べます。アンプシミュレーターの音を残したまま直す方法も、ここで分けておきましょう。
ギター録音の遅れと二重音は、先に分けて調べる
弾いている最中の音と、録り終えた音の再生は別々に確認します。ソフトの再生を止め、短い単音を弾いてみてください。ディレイやリバーブを使っている場合は一度切り、音の余韻と二重音を区別します。
今、どの鳴り方で困っていますか?
トラックやプラグインの設定を変える前に、プロジェクトを別名で保存し、そのコピーで試します。元の曲の設定を残して比べるためです。
バッファーサイズは、録音ソフトのオーディオ設定や機器のドライバー側で変更します。曲のファイルを開き直すだけで、バッファーまで元に戻るとは限りません。変更前の値をメモし、戻すときは同じ設定画面で手動で戻してください。確認中はヘッドホンの音量を少し下げ、一つ変えたら同じフレーズで比べます。
二重に聞こえるときは、残したい音の経路を選ぶ
オーディオインターフェースには、入力した音をパソコンへ回さず、そのままヘッドホンへ送る「ダイレクトモニター」があります。一方、録音ソフトの「入力モニター」は、ソフトを通った音を聴く機能です。
両方を同時に鳴らすと、直接の音と少し遅れた音が重なります。はっきりしたエコーになることも、音が薄く揺れるように聞こえることもあります。Focusriteの二重音の説明でも、この重なりを確認できます。
- ギター入力
- 本体のダイレクトモニター
- ヘッドホン
ソフトでかけたアンプの音やエフェクトは通りません。
- ギター入力
- 録音ソフト+アンプシミュレーター
- ヘッドホン
音作りを聴きながら弾けます。処理にかかる遅れを調整します。
アンプシミュレーターの音で弾きたい場合
- 本体のダイレクトモニターをオフにします。
- 録るトラックの入力モニターをオンにし、アンプシミュレーターを通った音を聴きます。
- 同じ単音を弾き、生っぽい音の重なりが消えたか確かめます。
二重音が消えても、音が出るタイミングだけ遅いなら、次のバッファーの調整へ進みます。ここで入力モニターまで切ると、聴きたかったアンプの音も出なくなります。
ソフトのエフェクトを聴かずに録ってよい場合
- 本体のダイレクトモニターをオンにします。
- 録るトラックの入力モニターをオフにします。録音待機は残します。
- ギターが一つの音で聞こえ、録音ソフトの入力メーターも動くことを確かめます。
これは本体へ入った音を直接聴く方法です。ギターをそのまま挿しているなら、ソフトで歪ませる前の音が聞こえます。アンプシミュレーターの歪みで弾きたい人は、上の方法を選んでください。
| 機種 | 確認する操作 |
|---|---|
| Scarlett 2i2 第4世代 | 前面のDirectボタンで、オフ・モノ・ステレオを切り替えます。ギター1本を直接聴くならモノを選びます。ソフトの音だけ聴くならオフです。公式ガイドの「Direct Monitor Button」で位置と表示を確認する |
| MOTU M2 | 使っている入力のMONボタンで直接聴く音を切り替えます。ソフトの音だけ聴くなら、その入力のMONをオフにします。公式説明書のM2前面図で位置を確認する |
片方を切っても二重音が残る場合
同じギター入力を、別のトラックでも聴いていないか見てください。録るトラック以外の入力モニターを切り、単独で起動したアンプソフトや配信ソフトも閉じて比べます。
Windowsでは、録音デバイスのプロパティにある「このデバイスを聴く」も別の経路になります。録音ソフトを閉じても遅れた音が残るなら、Focusriteの案内にある「聴く」タブを確認し、この設定をオフにして比べてください。
一つの音が遅れるときは、出力先とバッファーを確認する
弾いてから音が届くまでの遅れを「レイテンシー」と呼びます。ソフトでアンプの音を作る場合は、入力・処理・出力に時間がかかります。遅れを減らすときはバッファーを小さく、音切れが出たら一段戻すのが基本です。
ヘッドホンの接続先と、録音ソフトの機器設定をそろえる
まずは有線ヘッドホンをインターフェース本体へつなぎ、録音ソフトの出力先も同じ機器へそろえます。パソコン内蔵スピーカーや別の再生機器を混ぜずに確認すると、調べる場所を減らせます。
Windowsでは、メーカーが配布するドライバーを入れ、録音ソフト側でその機器のASIOドライバーを選びます。ASIOは録音用ソフトで小さい遅れを得るために使う音声ドライバーの方式です。Scarlettを使う場合は、Windows標準ドライバーとの違いと公式の導入案内を確認できます。
Macでは録音ソフトのオーディオ設定で、入出力に使うインターフェースを選びます。ドライバーや補助ソフトの要否は機種の案内に従ってください。
128から試し、遅れと音切れの両方を聴く
バッファーは、音をまとめて処理するための一時置き場です。値を小さくすると待ち時間を減らせますが、パソコンが間に合わないとプチプチした音や途切れが出ます。
- 録音ソフト、または機器の設定画面でバッファーサイズを探します。
- 選べる場合は128サンプルから試します。今の値が512や1024なら、弾いたときの遅れが変わるか聴いてみます。
- まだ遅れが気になり、音切れがなければ64へ下げます。
- プチプチした音が出る、再生が途切れる場合は128や256へ戻し、伴奏を流した状態でも確かめます。
WindowsのScarlettではFocusrite Notifierの設定、MOTU M2ではM Seriesのコントロールパネルから調整できます。Macは録音ソフトの設定を確認します。画面の場所はFocusriteのバッファー設定画面、MOTU公式説明書のBuffer Sizeを参照してください。
バッファーの数字だけでは、実際に聴こえる遅れの全量は分かりません。機器やドライバー、プラグインも関わるため、設定画面の遅延表示と、実際に弾いた感触の両方で比べます。
バッファーを下げても遅いなら、プラグインを減らして比べる
ギタートラックだけでなく、曲全体の出力に挿したプラグインも確認します。音を整えるために先の音まで読み込む処理などは、それ自体が遅れを加えることがあります。パソコンの負荷が低くても、遅れが小さいとは限りません。
保存したコピーで、仕上げ用に加えたプラグインを一つずつ無効にして比べてください。ただし、ソフトによってはプラグインをオフにしても、タイミングをそろえるための遅れが残ります。変わらないからといって、プラグインが無関係とは限りません。
判断しにくいときは、空のプロジェクトにギター用トラックを1本作り、同じ機器・同じバッファーで弾きます。アンプシミュレーターだけを加えても問題がないか、そこから確かめると整理しやすくなります。
空のプロジェクトでは弾きやすいなら、元の曲の処理や経路へ確認を絞れます。録音中だけ不要な処理を外し、録り終えてから戻す方法も使えます。
Fender Studio Proでは、低遅延モニターも試せる
Fender Studio Proの公式マニュアル8.1では、オーディオ設定の「Audio Device」で機器と「Device Buffer Size」を設定します。WindowsはStudio Proメニューのオプション、Macは環境設定から「Audio Setup」を開きます。
さらに「Processing」で「Dropout Protection」を調整し、処理用バッファーが機器のバッファーより大きい状態にすると、ソフト側の低遅延モニターを使えます。メイン出力のフェーダー下にある「D」を有効にし、緑色になっていることを確認します。青色は対応機器による別のモニター方式です。本体のDirectやMONボタンとは区別してください。
このモードでは、遅れの大きいプラグインが演奏中の音から外れる場合があります。低遅延に切り替えたら、アンプの音色も保たれているか聴いてください。音が変わるなら、通常の入力モニターへ戻してバッファーと処理を見直します。
Fender公式マニュアルの機器設定・低遅延モニターには設定画面と使用条件が載っています。英語の項目名を手がかりに、使っている版の画面と照らし合わせてください。
短く録って、「弾く・録る・再生する」まで確認する
弾いた瞬間の違和感が消えたら、伴奏やクリックを流して短いフレーズを録ります。聴きやすくなったことと、録音・再生ができることをセットで確認しておきましょう。
- 録音待機を入れた状態で、二重音が戻っていないかを確かめます。
- 10秒ほど弾いて録音し、途中で音が切れたり、プチプチ鳴ったりしていないか聴きます。
- 録音を止め、ギターを弾かずに再生します。モニター用にトラックをミュートした場合は解除します。
- 録ったフレーズが再生され、想定した音で聴けたら、使ったバッファー値とモニターの設定をメモします。
再生したギターが左右どちらか一方からしか聞こえないときは、片方からしか聞こえない録音の確認手順へ進んでください。
弾いている間の遅れだけを理由に、録音した波形をまとめて前へ動かすのは避けてください。録音位置の補正は、聴く経路の設定とは別です。再生した音にもずれがあるなら、伴奏とのタイミング、録音ソフトの補正設定、重複したトラックを分けて調べます。
直らないときは、インターフェース名、WindowsかMacか、録音ソフトの版、バッファー値、使ったプラグイン、空のプロジェクトでも起こるかをまとめると、メーカーへ状況を伝えやすくなります。設定だけで解消したなら、機材を買い替える必要はありません。
音を聴く経路が整ったら、次は録音を続けましょう。入力の選び方から書き出しまで確認したい方は、こちらの記事へ進んでください。

